● 唐紅の記憶  ●





「あれ、言ってなかったっけ?」

ごくりと固唾を飲んで見守る中発せられた声は、何とも気の抜けるような声だった。





第11話 『深まる疑惑』





ヒュォォオ、と古典的な風が吹く。山岳地帯のせいもあるが、絶対零度と形容したくなる
ほどの身も心も冷えるような風が一つ、佇んでいた彼らを襲った。その中で一人、マイペ
ースな雰囲気を漂わせている少年ことシリュウは、固まったメンバーを不審そうに眺めて
いる。ある者は大きく口を開けたままポカン、と間抜け面をしており、ある者は困ったよ
うに薄ら笑っていて、ある者はこめかみを押さえて大袈裟なほど大きく溜息を吐くものが
いた。

「おい、どういうことなんだ。もっと分かるように説明しろ」

約一名を除いて固まってしまった集団の中で真っ先に我に返ったヒューガは、頬の筋肉を
ひくつかせながら、先ほど襲ってきた二人の男とシリュウを交互に見やった。

「こ、こっちだって聞きたいっす!!シリュウ、どういうことだよ!?」
「ははーん、話が見えてきたぞー」

低音で不機嫌さを露にするヒューガに便乗するように、グランも負けじとシリュウを
食い入るように見つめる。良くも悪くもそれなりに目力のある二人に集中されたシリュウ
はと言えば、一瞬たじろいだ姿を見せたが、本人も何故こんな状況になっているのか、
いまいち理解していない。どう反応して良いのか分からず、何度も目を瞬かせて少しだけ
首を傾げるだけだ。そんな微妙な空気の中、一人だけ現状把握が出来た人間が一人。
グランの隣で先ほどまで苦笑を見せていた熊のような男こと、ダイオンだ。

「坊主は知らないんだろうが、こっちじゃあお前さんが攫われたって話になってんぞ?」
「は!?な、何で…」
「そりゃあ、一年前に何の音沙汰もなく坊主がいなくなるからだろう」

そう言えばグランが人攫いだの何だの、言っていたような…。

「そうっす!忽然と姿を消して、皆すっげぇ心配して…。
 今日見つけたと思ったら大怪我してて…―――心配したんだからな!!」

今にも泣きそうな悲愴な面持ちを見せたグランは、一度目元を右腕でグイッと拭う。
よほど感極まったのだろう、語尾が震えていた。

「ご、ごめんグラン。まさか皆が知らないとは、思ってなくて…」
「何はともあれ、元気そうでなによりだ」
「ダイオン、ごめんなさい」
「うはー、そうなると一年ぶりっすかぁ。懐かしいっす。
 …それにしてもシリュウ、身長伸びたな。まだ俺には追い付きそうにねーけど」
「うるさい。成長期なんだからすぐにでも追い越すってば」

やいやいと盛り上がる三人に取り残されたヒューガは、先ほどの問いを軽く無視されてい
ることに怒りを覚えるどころか、三人のマイペースさに唖然とその光景を眺めることしか
出来なかった。入り辛い。何なのだ、この和気あいあいとした親密な空気は。あまりに
親しげな雰囲気に入って良いものなのかと、流石のヒューガも無粋な真似は出来ず、相手
の顔を交互に見遣るが、やはり行動に移せないでいた。何しろあのシリュウが、子供らし
からぬ雰囲気を醸し出していたあのシリュウが、あの二人に囲まれた瞬間に年相応に近い
表情を浮かべているのだ。

(何者だ、こいつら…)

糸使いと名乗っていた男、年上であろうグランはやたらシリュウにべったりだ。短い旅の
中で気付いたのだが、シリュウはあまり人にべたべたされることを好んでいなかったはず。
ここ最近でエリーナに強制的にへばりつかれているせいか、少しは許容範囲が広くなった
ものの、人との接触を最低限に抑えている。本人は無自覚なのだろうが、日常の中でふと
した瞬間に見せるその姿は、実に子供らしからぬ行動だった。相棒として行動していると
はいえ、互いの深い部分までは干渉しない。気づいていながらも敢えて気づいていない
素振りで接してきたというのに、こう簡単に見ず知らずの赤の他人と事の原因である
シリュウが和やかでいると、何となく面白くない。ようやくシリュウという人格が分かり
つつあって、ばらばらになったパズルのピースをもとに戻すかのような作業で少年の内面
を理解していこうと思っていたというのに…一気に飛躍して、一気に楽しみを横取りされ
た気分だ。要するに、不愉快。

ただでさえエリーナという鬱陶しい存在がいるというのに。

「コホン。…それでシリュウ君、そちらの方々と君の関係をお話してくれますか?」

わざとらしい咳払いが一つ。多少なりとも苛立ちを感じさせるそれに、大袈裟に肩を
震わせたシリュウは、冷や汗一つ落として顔を引きつらせる。きっと振り返れば口元だけ
笑みを浮かべたカインが仁王立ちしているのだろう。そう考えるだけで背筋が凍るような
感覚になってしまう。

「俺たちのしたことは謝る。だがそう殺気立つんじゃない、若造」
「そうっす。この山岳は狼に似た肉食の魔物があちこち居座ってるんっすよ」
「そのようですね。ですが警戒心を解く理由にはならないでしょう?」
「ふーん…シリュウもよくこんな疲れるような奴と一緒にいるんだな」

何気に酷いことを吐き捨てたグランに、シリュウは思わず殴りたくなる衝動を堪える。
そう、カインがグランの一言に明らかに反応を見せていたのだ。その証拠に、晒している
腕を摩りたくなるような冷気をゾワリと感じた。怖々と後ろを振り返れば、お約束通り、
魔王でも降臨するのではないかと思わせるほどの含みのある笑みで、こめかみに青筋を
立てているカイン様がそこにいらっしゃった。その雰囲気にあたっているヒューガも
どこか顔色が悪い。その中でもけろりとした表情でいるエリーナは強者だ。

「とにかくここから移動しよう。俺たちを信じなくても構わない。
 だが、シリュウのことは信じてやってくれないか?その様子だと、仲間なんだろう?」

まだ言いたいことがあるグランは、少し唇を尖らせている。そんな彼の頭をニ、三度
落ち着かせるように軽く撫でたダイオンは、人の良い笑みをカインに向ける。悪意のない
それに裏表はないと直感が告げるのだが、そう簡単に信用は出来ない。ちらりとシリュウ
を見やれば、苦笑しているのか不安そうなのか、微妙な顔つきだ。とにかくこの雰囲気に
困惑していることは確かだ。

「…少しでも不審な素振りを見せた場合、シリュウ君の命はないものと思ってください」
「そ、そんなの駄目だよカイン!」

剣呑に目を細め、物騒なことを口にしたカインに流石のエリーナも開いた口が塞がらない。
しかしそんな願いも虚しく却下される。振り向いた時、エリーナに見せる穏やかな顔つき
とは裏腹に、グランとダイオンを見る目は警戒心を剥き出しにしている猫のようだ。

カインが二人に牙を剥いている理由として、エリーナに危害を加えようとしたことは勿論
であるが、もう一つ疑わしく思う節がある。単純なことだ、二人とも初対面の時から今も
ずっと、隙を見せていない。表面上はへらへらとしているが、入り込む隙間もないほど
彼らは自分自身に何か膜を張って警戒している。そこまではいかないものの、シリュウも
二人と似た雰囲気を持っている。互いにそれを意識していない様子だが、裏を返せば意識
せずとも隙を見せない動きをこれまで長く続けていた、ということになる。とても一般人
が出来る芸当ではない。

「構わないぜ。シリュウもそれでいいか?」
「そうするしかないみたいだ」
「うんうん、苦労性なのも相変わらずご健在だな」

拍子抜けしそうなほど飄々とした回答に、カインは脱力したくなる気分に陥った。まるで
他人事のように振る舞っている三人はバカなのか、それともそれほど肝が据わっているの
かのどちらかだ。

「…やっぱりこの二人について行くの?本当に大丈夫なの?」

何とか満場一致、という形で動こうとした途端、か細い声が聞こえた。ふと違和感を感じ
たシリュウは、隣にいるエリーナの方へ振り返る。いつの間にかシリュウの衣服の裾を
掴み、力を入れすぎている細い手は少し震えていた。その姿はまるで、行かないで、と
引き留めているようにも見える。

「エリーナ…」

完全に怯えきっているエリーナは、ダイオンはともかくグランの顔をまともに直視する
ことが出来ないでいた。先ほどの恐怖がまだ抜け切れていないのか、下唇を噛み、再び
泣き出さないよう必死になっていることが分かる。

「ど、どうしても行かなくちゃ駄目?私、あの人と一緒は…」
「あ、いや…さっきは本当にすんません。俺の早とちりのせいっすね」

気まずい雰囲気に、そして早まった行動をしでかした本人はガシガシと頭を掻いた。ばつ
が悪そうに視線をあちこちに飛ばしている。その態度から見ると、本当に反省している
ように伺えるのだが、カインは相変わらず剣呑な目つきのままそれを眺めている。何せ
このグランという男、本人が自覚しているのか否か判断し辛いところではあるのだが、
カインと似たようなものを腹の底に抱えていることは確かなのだ。それに勘付いているの
は、同属であるカインとヒューガ。ダイオンも知っているのだろうが、シリュウは分から
ない。良くも悪くも、この少年は腹黒い相手を軽くスルーしてしまう人物であるからだ。

「魔物がいることは確かだし、エリーナも疲れたろ?」
「……うん」
「大丈夫、グランもダイオンさんも俺の知り合いなんだ」

震えてシリュウの服の裾を掴んだままのエリーナの手をそっと壊れ物を扱うかのように
自らの手で包む。驚いて目を見開いて顔を上げたエリーナは、やはり不安そうな色が濃く
残っていた。

「ダイオンさんも言ってたけど、俺のこと信じてくれないかな。
 …約束するよ、もうエリーナを危ない目になんか遭わせないって」

真剣な顔つきから、ふわりと綻ぶような笑み。

「っうん!」

手袋越しであったが、シリュウの手の温かさが染み渡るように感じたエリーナは、
くしゃりと顔を歪ませながらも、大きく一つ縦に首を振った。

「さて、あまり悠長に話してられない。そろそろ移動するとしよう」
「アジトにご案内っすね。また霧が出てきたんで、足元には気をつけてください」

バサバサと鴉が空を飛び交う。突然の物音でビクリと肩を震わせたエリーナは、鴉の黒に
不気味さを感じたのだろう、シリュウの腕に自分の腕を絡め、びくびくしながら辺りを
慎重に見回している。ようやく濃霧が晴れたかと思いきや、再び立ち込めたそれに
ヒューガは隠すことなく舌打ちする。ピリピリとした空気は変わっていない。黙り込んで
はいるが、納得のいく説明をしてもらっていないせいか、カインよりも性質の悪い苛立ち
を見せていた。それに軽く目配せしたシリュウは、軽く溜息を吐いた。




自然な会話を楽しみながら先頭を歩く二人に、シリュウ達は大人しくついて行った。シリ
ュウが頭に叩き込んだ山岳を抜けるための地図は、既に白紙状態だ。今歩いている場所が
どの辺りなのか、皆目見当がつかない。おまけに風景が変わらないものだから、もしかす
ると同じ場所をぐるぐる回っているのではないかと錯覚する。それはグランとダイオンを
除くメンバーも同じようで、とてもじゃないが前方を歩いている二人のように楽観的な
雰囲気にはなれない。緊張した面持ちで、移動し始めてからずっと剣の柄に触れている
カインは神経質になっていた。もし再びあの二人が襲ってくるとしても、自分には被害が
出ないとシリュウは自身を評価している。自意識過剰はなく、実際そうなのだと断言出来
る。だから警戒心など、欠片も抱いていない。そんなことを言ってしまえば、目を細めて
カインに睨まれることなど分かっているけれど。

「お、見えてきたっすよ。あれが俺たちの今のアジトっす」

そう言ってグランが指差した方向を皆が追いかける。濃霧の中にゆらゆらと揺らめく光が
二つほどあった。赤色ではなく橙色とも言えるそれが松明だと理解するのに、そう時間は
かからなかった。アジトが見えてきたことで興奮気味のグランをダイオンが宥めるが、
二人とも心なしか歩む速度が上がっている。

「あ〜、お父さんに〜グランちゃん〜、お帰りなさ〜い……って、あれ〜?あれれ〜?」

耳に馴染みやすいソプラノ声が皆を出迎える。松明が不自然に揺れていたのは、この
気の抜けるような少女が松明を持ちながらうろうろと徘徊していたからだろう。

「ただいまシスア。見回り御苦労さん」
「お父さん〜シスアは寝ているんでしょうか〜?
目の前にシリュウちゃんがいるように見えます〜。摩訶不思議ですねぇ〜」

どんな気まずい雰囲気も一気にぶち壊せそうなほどのんびりとした口調の少女は、何度も
目を瞬かせ、特徴的である大きな眼鏡を外して、何度も目元をごしごしと擦る。再び眼鏡
を装着し、ぞろぞろと歩いてくる中にいる黒い存在を、ジーっと穴が開きそうなほど見つ
めた。

「やあシスア。久し振り」
「はれ〜、貴方はシリュウちゃんですか〜?」
「うん、シリュウだよ。ただいま」
「はい〜、久し振りです〜、お帰りなさいです〜」

シリュウよりも頭二つ分は小さい少女、ダイオンの娘らしいシスアは小さく首を傾げ、
へにゃり、と笑った。つられて笑い返すシリュウの頬は緩みきっており、ヒューガ達が
目を丸くさせるほどそれはだらしない。完全に骨抜きにされている。

そんなシリュウを見て同じくエリーナも驚きを隠せないでいたが、あまりに仲睦まじい
二人の姿を見ていると、次第にムスッとした顔つきになっていた。唇を尖らせ、つまらな
さそうにその光景を見ている。シスアが自分よりずっと小さな子供だとは分かっているの
だが、あんなに安心しきって笑うシリュウを見るのは初めてなのだ。そんな顔を見せる
ことが出来るほど、相手に心を許しているということになる。それがとても気に入らない。

「な、何だ、この凄まじい脱力感は…」
「ええ。ですが私個人の意見としては、彼の娘ということが未だに信じられません」

ほのぼのとしているシリュウとシスアの傍らにいるダイオンを食い入るように見たカイン
は、再び視線をシスアに戻す。…とてもじゃないがあの豪快な男の娘だとは思えない。
ダイオンの茶褐色の髪の色とはかけ離れた、少し色素の抜けた金髪。腰にまで届きそうな
それは、後ろで緩く三つ編みにされていた。肌の色も雪のように白く、その中で映えてい
る薄紫の瞳は、垂れているものの少女らしく大きなものだった。

「あれ、見張り番はシスアだけだったっけ?」

和やかな雰囲気の二人にガバッと抱きついたグランは不思議そうに辺りを見回す。シスア
とグランの間にいたシリュウは、シスアごと一緒に抱きつかれたせいで、ぐえ、とカエル
が潰れた時のような声を上げる。見事にサンドイッチされていた。

「さっきおじいちゃんが〜、お頭さんを〜、呼びに行きました〜」
「か、頭って…」
「ふーん、んじゃあシスアと見張り番交代か。そういやあの人も幻術使えたよな」
「はい〜、シスアも今使ってます〜」

ふむふむと相槌を打つグランを余所に、シリュウはひくりと顔を引き攣らせた。
そんなシリュウに皆は気付かず、寧ろ幻術、という言葉に引っかかりを覚えたようだ。
しかしすぐに合点がいったヒューガは胡散臭そうな顔をしてシスアを見下ろす。ただの
子供ならばすぐにでも泣き出してしまいそうなほど、今のヒューガの表情は不機嫌面その
ものだったのだが、ばちりと視線が合ったシスアは、泣くどころか逆にヒューガのことを、
まるで品定めしているかのように、相変わらずの垂れ目で凝視していた。予想外の反応に
たじろいだヒューガは、逆に直視されることで居た堪れない気分になる。立場逆転だ。

「…お兄さんは〜、シリュウちゃんのお友達〜?」
「え、ああ、まあそんなところだ」
「そうですか〜…はい〜分かりました〜」

先の質問で一体何が分かったのだろう、とヒューガは訝しげに眉をひそめる。しかし既に
興味を失ったシスアは、再びシリュウとともにグランの手によって抱き込まれていた。

(こいつ、本当にただの餓鬼か?)

言いようのない不信感が募る。そう思っているのは、カインも同じだろう。こちらも見極
めるために目を凝らしてはいるが、なかなか尾を掴ませないでいた。

「そっちのお姉さんも〜シリュウちゃんのお友達〜?」

ふと思考を巡らせていると、同じ質問が今度はエリーナに向く。こてん、と首を傾げて
いる様は大変可愛らしい。それまで警戒心を持っていたエリーナも、癒し系のシスアには
勝てなかったのか、複雑そうな面持ちではあるが、取り繕ったような笑みを浮かべている。
そして次はカイン。変わらない質問をされ、視線を落としたカインは暫く無表情であった
が、突然ふわりと笑う。背後に何かを漂わせているような含みのあるものではなく、エリ
ーナに向けるものと同様、穏やかなもので。

「どうだ、シスア」
「……大丈夫です〜お家に入れても問題ないですよ〜」
「あーあ、やっぱりかぁ。ほんとさっきはすみませんでしたっす」

何が大丈夫で、何が問題ないのか。さっぱり理解出来ないでいるシリュウを除く三人は
目を見合せて訝しげにするだけだった。何はともあれ、彼らの言うアジトに入場する
許可を取れたことには安堵する。

「ね、ねえ。松明だけでどこにもアジトなんてもの、ないよ?」

アジト、お家。…とにかくここにいる面子以外の気配などどこからも感じられない。シス
アがいた場所から後ろを覗くが、やはり鬱蒼とした木々が続くだけだ。そもそも、薄暗く
て、いつ魔物が現れてもおかしくない場所に、何故こんな小さな子供がいるのかが疑問だ。
とてもじゃないが屈強な戦士になど見えない。

「ああ、アジトは…」

グランが補足説明をしようとした瞬間だった。


――――ヒュンッ


シスアが立っていた何もない場所から、風を裂くような音が一つ。

「―――――!!」

ぎらりと鈍く光るそれを、間一髪で指の間で受け止めたシリュウの反射神経は見事だった。
受け止めた冷たい何かを、ゆっくり視線を落として見やる。それはシリュウがよく知って
いるナイフだった。

「…ま、まさか」

瞬く間に起きた事件に、緩んでいた警戒が一気に上昇する。いち早く鞘から剣を抜き、
シリュウの前に躍り出たヒューガが敵意を剥き出しにし、剣呑な目つきで薄暗い奥を
睨みつける。気配は一つ。しかし、姿が見えない。


「一年間のブランクで鈍ったんじゃないかと思ったけど、腕は落ちちゃいないようだね。
 こんな半端な攻撃で怪我でもしようものなら、崖から蹴落とすところだったよ」
 

何もない空間にゆらりと現れたのは、艶めかしい衣装をまとった女の姿だった。







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