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「お前、色白いな」 「ん?そうかなぁ」 ふと、彼女の指に触れてみた。 フェイルは気にも留めた様子はない。 寧ろ手を繋ぐことが好きなのか、甘えるように握り返してくる。 勿論、相変わらず人を穏やかにさせる最高の笑顔を忘れないで。 それがあまりにも可愛らしくて、つい錯覚してしまうのだけれど。 最近はその笑顔が見たくて、用もないのにわざと手を握る。 いつもなら「手、冷たいね」と言われる立場なのだが、 今日は俺の方が口を開くのが早かった。 今更な気もするが、本当に白い。 ハッと目を奪われるほど、雪のように。 「旅をしていれば日焼けしてもおかしくないが…」 「あんまり焼けない体質なのかも。 海で泳いだりしない限り黒くならないのかな?」 仲間で一番の美白はフェイルだ。 陶磁の肌に金の髪、そして碧眼はかなり栄える。 まるで、作りものの人形のようだ。 「シリウス君は丁度良いくらいの日焼けだね」 「これはもとからだ。大して日焼けはしていない」 「そうなんだ。健康的な色だね」 黒過ぎず白過ぎず。 やや浅黒さが入っているが、小麦色に似たシリウスの肌の色は健康的だ。 「でも私、シリウス君の色好きだなあ。 リュオ君やアレスト達とは違うシリウス君だけの色が好き」 「………………」 一体、何を言い出すんだ。 これは計算なのか。それとも素なのか。 後者だとすれば、何という性質の悪さ。 はぁ、と耳に残る溜息を吐けば、不思議そうに見上げるフェイルの姿が。 どうしてこう、いちいち人の心を掻き乱すのだろうか。 無意識であることは十二分に理解している。 分かっているのだが、その無意識が酷く心を揺さぐ。 本当に、困ったものだ。 自覚がないだなんて、どうすれば良いのだ。 「俺はお前が心配だ」 色んな意味で。 暖かい地方で、彼女はかなり浮いている。多分気付いていないだろう。 人形のような彼女に、地方の連中はその白さに時折目を剥いている。 華奢な部分も加算されて、体力が無さそうに見えるのだろう。 実際彼女はぴんぴんしているから何も心配することはないのだが、 何故だろう、こんなにもフェイルを気遣ってしまうのは。 「頼むから、あまり無理をするな」 フェイルの温かい手に触れても、癒えない。 握り続けていると余計に不安が生じる。 これは、何だ。 「うん?」 ああ、でもこれだけは確かなんだ。 どんなに俺がフェイルに手を伸ばしても、 どんなに俺がフェイルを想っても、 彼女が先に掴むのは俺の手じゃない。 せめて今だけは この手に触れて それさえ許されないのなら 多分、俺は
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