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「それじゃあ、恒例の役割分担はじめます!」 旅をすれば、その日の内に町に着く割合など低いわけで。 炊事などの家事は、当然のことながら自分達で行わなければならない。 幸いなことに、温室育ちで包丁も握れないという人物はこの中にはおらず、 一部を除いてほぼ全員が一般庶民で、生活面において苦労することはなかった。 「よっしゃ! 今日はうちが腕によりをかけてうまいもん作っちゃるさかいな」 家事が趣味だと豪語するフェイルが、常に食事事情を預かっているのだが、 七日に一度、まるで王様ゲームをするかの如く、くじ引きで役割が変わることがある。 本日の食事担当はアレストだ。 彼女の料理は何度か口にしたことがあるが、 見た目は少々不格好で、時たま焦げていることがあるが、味は至って普通だ。 問題は、残った他の役割分担員だ。 「えーと……薪拾いの人、挙手!」 アレストが下準備をしている間に、水汲みと薪拾いをする必要がある。 両者とも、二人ずつ。 元気良く右腕を上げたフェイルは、どうやら薪拾い組になったようだった。 「げ」 「……何だそのあからさまな声は」 フェイルの声に遅れて反応したのは、 のろのろと片手を上げたシリウスであった。 自分が引いてしまったものははずれの水汲みであるから、 せめてフェイルのペアがシギであれば良いのに、と思った刹那。 リュオイルが思わず上げてしまった嫌そうな声に、 不機嫌面した男が、双眸を細めてこちらを睨む。 実はシリウスが仲間に加わってから、 フェイルとペアになる確率が急速に激減しているのだ。 更にここ数週間、一度も彼女と一緒になった試しがない。 しかも、だ。何故か八割がたフェイルとシリウスがペアになる。 最初はくじ引きのくじ自体に何か細工がしてあるのかと疑ったが…。 「あんたの運がないだけや」 と、アレストに一蹴される始末。 確かに、よくよく考えてみればそうだ。 いくらなんでも、こんなくじに偽造工作するほど暇な奴は誰もいない。 勿論、それは宿敵であるシリウスにも言えること。 しかもこれを管理しているのはフェイルの鞄なのだから、疑いは完全に晴れる。 ……晴れる、のだが。 「それじゃあシリウス君、行こう!」 こちらの心は、ここ最近曇天である。 しまいには落雷しそうなほど、ある意味病んでいた。 七日に一度の、この運命をかけたくじ引き。 この日ほど恨めしく思った日はない。 「分かった」 「今日は私の方がいっぱい拾うからね?」 「……フッ、先週も同じこと言ってたな」 「うう、今日は絶対拾うもん」 あの場所を取られた。 ずっと隣にいられると思ったのに、あっさり奪われてしまった。 当然のように彼女は笑う。 楽しそうに、嬉しそうに、シリウスを見つめながら。 ――――ズキリ 「おーいリュオイル。俺達も行くぞ」 「………うん、分かってる」 君が、遠いよ。 僕じゃない誰かにその笑顔は向けられて 何でこっち向いてくれないの? 僕は毎日、君ばかり見ているのに
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