Ska & Qray
それは一休み。何もかも忘れることの出来た一時だったと思う。
天候のことも、今の世界の現状についても、故郷のことも……そして、腕のことも何もかも。
忘れることが出来たらいいな、そう思った。
外は雨。唯一雨宿りのできる、小さな屋根だけの付いている建築物に1人と1匹はいた。
「雨だね、スカ」
クレィは、雨の音しか聞こえない今、ただ沈黙だけが流れている空気を打ち破る。
それに反応することもなく、スカはただ雨を見つめていた。
スカは、一般で言う<旅人>である。理由は、丁度一年前に、両親の命と引き換えに呪いをかけられた、獣化した左腕の呪いを解くことである。
正直、当時の記憶は新鮮ではあるが、覚えていない。
だからこそ、この旅は同時に、真実を知るための旅となっている。
両親が心配して心配を重ねた結果、1人で旅に出るのは反対らしく、幼なじみのクレィをドラゴンに変化させ、一緒に旅をすることになった。それにも、禁忌の薬を使ったのだとか何とかで、スカにはその決断は重すぎたが、今となっては仕方のないこと。素直に受け入れておくことにした。
そんな旅で、今は一休み。雨が降っていることもあるが、スカは休みたかった。
「……スカ?」
ドラゴン姿のクレィは、翼をバサバサとさせながら、スカの目の前に姿を現す。
「雨かぁ……」
クレィが目の前にきて、目に生気が戻った。
戻った瞬間の言葉が、これである。クレィも、呆れてものも言えない。
「起きた?」
「起きたよ」
クレィが聞く冗談に、スカも冗談交じりで答える。
こんな雨のなか、そこだけ晴れているかの如く明るかった。
「クレィ」
スカは、目を瞑りながらクレィに語る。
「雨ってさ、なんで落ちちゃうんだろうね」
「これは、落ちてるわけじゃなくて、降ってるんだよ」
「違うよ。落ちてるんだよ」
スカは獣化とした左腕を見た。
「この腕みたいに、ただ堕ちていくだけ……」
スカの目は潤んでいたかもしれない。だけど、クレィには見えなかった。見たくなかった。
「……雨は、泣いてるんじゃない?」
クレィは、そんなスカの意見を聞いて言う。
昔、誰かがそう言っていた。雨とは、神の涙であると。
もし、それが本当ならば、神は泣き虫だ。
「泣き虫か……」
スカは、笑う。
「仕方ないよ」
「え?」
スカの意外な返答にクレィは、戸惑う。
そんなクレィの気も知らずに、スカは続けた。
「だって、今この瞬間にも、人は死んじゃってるんだよ」
クレィの口が固く閉じられた。
誰でも知っていること、誰でもわかっていること。だけど、スカのように思いつきはしなかった。
神が泣くのは、人間が死んでいるから。悲しいからなのか。
案外、満更でもないような気がしてきた。
「神様は、優しい人だからね」
スカは、ニコッと笑ってクレィの方を見た。
「なんてね」
雨の降りつづけるなか、スカは建造物から飛び出した。
クレィが小さく呼び止める。
「雨って言うのはね、海からきたんだよ! それが蒸発して蒸気となって、さらに冷やされて雨になるんだよ! そしてまた海に戻るの!」
その言葉を言いながら、スカは雨に濡れつづけていた。そのまま踊るように舞う。
だけど、表情は辛そうで、寂しそうだった。
雨は何も隠してやくれやしない。
クレィも飛び出した。
雨は、容赦なく降りつづける。
「つまりさ――」クレィは大きな声で、
「永遠って言うこと?」
スカは立ち止まって、そして笑った。
一休み。それはまだまだ一休み。
どうか、この日を忘れないように、神様見守っていてください。
『すかい』の出野真由さんが運営するサイトの1000hitフリー小説で看板娘とペットのお話です。
細かな表現は何度読み返しても何とも言えません・・・!!
シリアスなお話しを読むのも書くのも好きですが、出野さんのように上手く言葉で表すことが出来ません(泣)