06 たとえ世界が拒んでも












居場所が分からなかった。
時折孤独を感じた。
気が付けば空を見上げて、誰も見ぬところで涙を流す。



「私の居場所は、どこ」



少女は後ろにいる彼に尋ねるわけでもなく、ポツリと独り言を零した。
少女は手のひらを見つめ、そして今にも降りそうな空を見上げた。



「何で、生まれてきたのかな」



いつもよりずっと細く頼りない背中に、彼は手を伸ばそうとした。
だけど、届かない。

手は虚空を掻き、行き場の失った手を彼は悔しそうに見つめた。

空を見上げることを止めた少女は、そのまま俯いた。
見かねた彼は、彼女の名を呼びこちらを振り向かせようとした。


………ポツ


雨が彼の言葉を遮った。
彼は空を見上げ、降り出した雨粒を恨めしげに睨み付ける。



「雨」



今にも消えそうなほど、まるで衰弱した者の声のように少女は呟いた。
軽く空を見上げ、少女は静かに振り返り、そして笑う。

雨は、降り続ける。

冷たく、けれど熱いものが、少女の眦から零れ落ちていた。

彼は一歩近づき、また一歩と歩み寄る。
少女は相変わらず薄く、貼り付けた笑みを浮かべていた。



「辛い、よ」



笑みは段々崩れ、変わりに、溢れんばかりに雫が落ちた。
彼は一瞬驚いた表情を見せた。
少女の頬に手を当て、泣きそうにくしゃりと顔を歪めたが、
ゆっくり少女の肩を抱き、引き寄せた



「ここが」


「お前の、居場所だ」




彼の腕の中で、また一つ涙が零れた。










たとえ世界が  拒んでも










与えられた腕の中は


ただ、冷たいだけだったけれど









Copyright(c) 2009 rio all rights reserved.