見えない怒りはその地の者に







過去の怒りは面影を映した者に


















■天と地の狭間の英雄■
       【地下水路へ】〜もう一つの顔〜















声が聞こえる

闇の中にうごめく不気味な声

明日の朝日が見れるか分からない不安と恐怖


声が聞こえた

低く暗い、這い蹲る声

魂を奪われそうな戦慄の効いた声








「フェイル?今なんて?」

「どういうことや、そんな事ありえるんか!?」

「まだ確定したわけじゃないんだけど、一番それが納得いくかと思って。」

「地下水路・・・そこまで気がいかなかったな。」

「ビートさんの苛々の原因は恐らくこれ。」



女将さんから地下水路の見取り図を貸してもらったフェイルはポイントとなる点を数箇所示した。
そこには分かりやすく赤丸で書かれている。



「・・・東の川沿いの水路室。北の民家の水路室、北西の・・・・・」

「ビート邸の水路室やな。」



顔を見合わせると三人とも同じ事を考えていたのか同じように頷いた。



「「「今夜決行」」」




















「・・・・・な、なんだ。一体何が・・・・」





――苦しい。人間、人間め・・・・・――





「何なのだ!?いつも聞こえるこの声は!!」




――欲しい、その血肉が欲しい!!――




「や、やめろ。それ以上ちかづくな!!」





――人間、にんげん、ニンゲン・・・・・貴様さえいなければ!!!――





「う、うわあああああああ!!!」





見えない怒りはその地の者に

過去の怒りはその面影を映した者に

現在の怒りは己の意のままに















カタ、カタ、カタ・・・・・・・・・ガタ、ガタン!







「しぃぃぃ!アレスト!!」←小声

「ああもう!!ちゃんと押さえて!!!」←更に小声

「ご、ごめん。」←普通



新月になったばかりの真っ暗な村の外を三人はこそこそと急いで歩いていた。
着いた場所はこの村の地下水路。
東の川沿いにある最も遠い所からの進入だ。
幸いにも今は警備の交代時間らしく誰もいない。
忍び込むなら今が絶好のチャンスだ。



「もうちょっとでこの錆鉄の鎖外れるんや。重いけどしっかり支えとき。」



不思議な事にこの水路に続く扉は頑丈な鎖と鍵によって阻まれていた。
アレストが何とか一つの鍵を外したがあとあと一つが中々外れない。



「真っ暗だから気を付けて。リュオ君。松明貸して。」



通常より一回りは小さい松明をフェイルに渡す。
光は小さいがその分必要な部分だけをしっかり照らしてくれる。


「もう少しや。リュオイル、この扉倒れそうやで支えといて。
 フェイルは後ろ下がっときな。」




ガチャン。





「っ!アレスト早くしろ。この扉予想以上に重い!!」

「分かってるって。ええいっ・・・・てりゃ!!」



ガチャン、ガチャ・・・・・ゴトン!




「ふう。」

「あ〜。錆くさいわ。」」

「お疲れ、二人とも。」

「いや、早く行こう。・・・ん?」



扉の向こうに何かが見える。
赤や青や色とりどりの魔石が施されていた。



「なんでこんな物が施されているんだ?」

「怪しぃ。」

「ちょっと見せて?」



ひょいっと顔を出すとフェイルはその石に手を振れてみた。



―――――バチィィィ!!


「大丈夫かフェイル!!」

「う、うん。でもこれ・・・・」



魔法壁。
でも一体誰が?







――あの六英雄が活躍した・・・――




「そっか、もしかしたら六英雄が施したのかもしれない。」

「六英雄が?」

「うん。村の人が言ってたの。
 300年以上前に一度だけここは魔族に襲撃されたって。
 そのとき救ってくれたのがあの六英雄だったんだって。」



もしもそうならつじつまが合う。
昔は穏やかだったここの屋敷主が、突然狂ったのは・・・。


操魔。



「兎に角や。これどないするん?
 フェイルが弾き返されたんじゃあ・・・」

「大丈夫。何とかやってみるよ。」


もう一度石に手を振れてみる。
今度は微量にながらも魔力を放出して。




ポォォォオ・・・・。




「光った。一体これは・・・」



「お願い・・・・解き放って。」




フェイルの声に反応するように、石が砕けてゆく。




ガチャ・・・・・ガチャン・・・・バキッ!!




「解き放て、古の封印よ、解き放て。」




バキッ、バキィ、パキ・・・。



「すごい・・・・」

「・・・・・・・」




バキ・・・・パンッ!!!!!





「・・・・何か出来ちゃったみたい。」

「すごいやないかフェイル!!あの石砕くなんて。」

「ううん、私まだ何にもしてなかったの。
 まだ詠唱中だったから、割れないはずなんだけど。」

「まぁ兎に角先に進もうや。急がへんとまた夜明けになるで。」



小さな疑問を抱きつつも、三人は事を急いでいるのであえてその事には触れなかった。
光り輝いていた魔石は、砕けても尚その光りを失わない。
破片となったそれは、3人を見守るかのようにして色鮮やかに煌いていた。
















来る・・・・来る・・・・

忌まわしい過去の面影。

憎い弱小のニンゲンが。




「・・・・・オノレ。」
















――――サァァァァァァアア・・。




「わっ!」

「大丈夫か、フェイル。」

「気ぃつけや、ここは外より暗いし何より湿ってて苔が生えてて滑りやすいでな。」


後ろ向きに倒れそうになったフェイルは、最後尾にいたリュオイルに掴まれて何とか転ぶ事を免れた。
地表は換気が一切されていなかったせいかヌメヌメとしており、
少しでも気を抜けば転倒してしまう可能性がある。



「あ、ありがとう。」

「いや、・・・・これ以上松明を燃やすわけにもいかないからな。
 下手をするとすぐにばれてしまう。」



今松明は先頭を歩いているアレストが持っている。
リュオイルも持ったほうがいいかもしれないが如何せん、厳密な行動をしているので
そう易々と明かりを増やすわけにはいかない。



「さて、と。そろそろ北の民家の水路室に着きそうやな。この道を今度は・・・・・」

「えっと、左だね。」

「今までより静かに行くんだぞ。民家の人に起きられては元も子もないからな。」

「こんな所で戦闘やなんて死んでもごめんやわ。」








―――来たきたキタキタ!!―――





「・・・・!?」


急に寒気が走り角を曲がった瞬間、フェイルは驚愕の瞳を薄暗い奥の方へ向けた。
他の二人もフェイルほどではないが何かを感じ取ったのか、よく目を凝らして奥を見る。



「・・・・な、何?」



すぐ足元には水が流れているので、この場所は寒い。
だが今の空気は自然な寒さではなく、何か殺気を含んだ、肌に突き刺さるような寒さだった。
その視線を、3人全員浴びている。



「アレスト、どうやらこの場所の戦闘は死んでも避けれなさそうだ。」

「最悪ー。」


アレストは何処からとも無く出してきた短剣より短く、そして少し細い刀を。
リュオイルは慎重に奥を見ながら腰の剣に手を当てる。



「操魔じゃ、ない?」



フェイルの途切れそうな声に敏感に反応したのはリュオイルだった。
不思議そうに顔を見ると驚愕の色をした瞳は先ほどと変わることなく大きな目を更に大きくしている。


「フェイル?」

「違う、私とんでもない見た手違いをしたかもしれない。
 多分・・・多分これは「来るで!!!!」





ザバァァァァァァァアアアアア!!!!!





「水の中!?」「伏せろ!!」「なんじゃこりゃぁあ!!?」



通路から来る気配と思っていた三人は予想だにもしなかった事にいつもより反応が遅れた。
アレストは前に、リュオイルは後ろに。
そして最悪のポジションにいたフェイルは水の中。



「フェイル!!無事かえ?」

「ケホッ・・・な、何とか・・・。」

「来るぞ。構えとくんだ!」





――――イ・・・い、タ。――――



「・・・?」

「フェイル!奴の言葉に惑わされるな、詠唱に集中しろ!!」




厳しいリュオイルの声にはっとしてフェイルは通路に上がり早口で詠唱をはじめた。
さっきあれが言いかけた言葉も気になるが、今はそれどころじゃない。
集中途切れたら、そこで勝敗がついてしまう。





『 古き束縛を受けた緋色の木霊 炎に呑まれて滅亡せよ 』


―――――イラプション!!!




狭い水路に炎が舞い上がりリュオイルとアレストはやむを得ず後ろに引く。
フェイル自身も狭いのは分かっているのだが雷を落とせば周りにも電気が走る。
かといって風を起こせばその衝撃でこの古い水路が崩れる可能性もある。
更に水なんかを使えば他の人も巻き込まれて流されてしまうのがオチだ。



「くっ、ここではフェイルの魔法は自殺行為になるか。」

「来るで!リュオイル!!!」



相手が何者かも二人はまだ掴めない。
能力も分からない。
そしてこの薄暗さで何処から仕掛けてくるかも分からない。





どうする、どうすればこの場を乗り切れる?


魔法は使えない。仕留めたとしても二人に怪我をさせてしまう。


私が加勢するべき?


それは駄目だ、相打ちになる可能性が高すぎる。


どうする・・・・どうすれば・・・。





――――シュッ!!



アレストの短剣が黒い物体を掠めた。
だがそれは怯むことなく向かってくる。
手ごたえが無いので、今の攻撃が当たったか否かも分からない。




「なんや、飛び道具効かないんやないか!!」

「こっちも斬れはするけど、全く微動だにしない。」



斬りつけても斬りつけても倒れない。
痛みさえも忘れているような、そんな感覚。



「・・・・ニンゲン・・・愚かな・・・・」



そう言った瞬間、それは少し後ろに引いた。
人の手のような形をした物が円を空で描き黒の魔法陣が広がる。


「・・・・・・!?」

「不味い、闇属性の致死効果の魔法か!?」

「あれは、ベイスメント!?二人とも下がって!!」


フェイルが前線にでながら急いで呪文を唱える。
だが相手の呪文も早く間に合うかどうか分からない!







「・・・滅べ、忌マワしきニンゲンよ。」





――――ベイスメント!! ―――――護身麗っ!!!



ほんの一秒も掛からないほどの時間であったが、敵の方が呪文を完成させるのが早かった。
その微妙な時間のおかげで前線に出ていたフェイルの頬や腕は、
嫌な音をたててズタズタに引き裂かれた。



「――――っきゃぁぁぁぁぁああああ!!!」


「フェイル!!!」



自分達を庇ったフェイルの元へすぐ駆け寄ったリュオイルは真っ赤に染まったフェイルに息を呑んだ。
意識はあるようで、リュオイルの肩に掴まりながら立ち上がる。
ポタポタと血が落ちる音が聞こえるが、そんなことどうだっていい。




「や、闇属性で、500・・年前以上から居座ってるこの正体は・・・」




先の戦乱で破れた魔族。

その魂が死にきれなくこの地に残っていた不成仏の魂。




「魔族、通りで。」

「多分、ビートさんの人嫌・・・いは、魂を喰われていた、から。
 だから、これを倒せば・・・・ビートさんは・・・・多分。」

「フェイル、もう喋るな!傷が開く!!」

「だ、大丈夫。箇所は多いけど、そこまで貫通して無いから。」



だが傷の箇所が多くて出血が止まらない。
今は何とか持ちこたえているがそのうち貧血で倒れるのは目に見えている。
真っ青になりながらリュオイルはとりあえず止血だけでもする。
治療する時間が無いのがこんなにも悔しい。




(どうして前に出た?)


(後ろから呪文をかければ良いのにどうして前に出る?)



苛々がリュオイルの心の中を虫食んでいく。
冷静さを保てない。
リュオイルがフェイルの止血をしているのでアレストは変わりに前に出る。
だがそう長くは持たない。


(ここまでズタズタになってどうして守ろうとする?)


傷ついた彼女は今だ前に出ようとする。
だがそんな事を許さないようにリュオイルはフェイルの肩を抱いていた。
きっとアレストも怒るだろう。
さっきからフェイルの方を心配そうに見ている。


(どうして頼ってくれない?)


彼女は人懐っこいように見えるが、実はそれほどではない。
『仲間』という存在の前でも、どこか一線置いている。
いや、完全に仲間と思っていないのかもしれない。




苛々する。





どうしようもなく苛々する。






半分はフェイルの行動に。そしてもう半分は自分の弱さに。



「リュオ君!危ないよ、私から離れて。」



その瞬間何かが切れたような音がした。
いや、そう聞こえたのかもしれなは錯覚ではないだろう。
そこで、僕の意識は頭の中で響く誰かの声によって断たれた。





アレストが前で戦っている中、フェイルは何も出来ずにいて悔しかった。
前に出るのが駄目なら、魔法で・・・・・。
そう思って無理をして呪文を唱え始める。
だが、それは後ろからくる冷たい目線で中断された。



「リュオ君?」



        


目の前にいる全てが邪魔だ。




消え失せれば、どれだけ心地いいだろう。




邪魔なものは、例え何であろうと。




消さなければならない。




それが俺の役目。




甘ちゃんな、こいつが出来ない事を





俺が変わりにやってやる。










「俺に逆らおうとする気か?弱小の魔族が。」









「え・・・リュオ、君?」

「・・・・・・」




フェイルが反射的に声を発したと同時にリュオイルの目が、
いつもと違う冷たい目を下ろしてきた。
いつもは「何だい?」と穏やかに言うのだが、今は何も宿していない。
じっとフェイルを見ている。



「リュ・・・・リュオ君?」



フェイルはかなり怖がっていた。
いつもと違うリュオイルに、完全に怯えている。
いや、そうじゃない。
姿はリュオイルなのに、心はリュオイルじゃないその誰かに恐怖を抱いていた。



「・・・・・・」

「リュ、リュオイル?」



戦闘をしていたアレストさえも石のように固まっている。
それは何故だ?
口調もそうだが、一人称が「僕」から「俺」に変わっている。
ついでに言えば目つきも光を宿していない。



「・・・怪我人は怪我人らしく大人しくしていろ。」

「え、あ、はい。ごめんなさい。」



威圧に負けてついうっかりそう言ってしまった。
だが今彼を止めれるものは誰一人いないだろう。

(そういえばフィンウェルを出るときリティオンさんやカシオスさんが言ってた様な・・・)




――あいつたまに暴走するからその時は頼んだわよ?――

――あの歳で色々我慢してた事があったから、たまに性格変わるんだよな。――――




アレストを押し退けてリュオイルは黒く笑った。
目の前の形に例えれない魔族の魂はリュオイルに襲い掛かかる。
だがいつもとは違う動きでその場所から消えた。



「リュオイル!?」



アレストが周りを見るが何処にもいない。
気配も完全に絶たれた。




――あいつってその時は無茶苦茶無敵なんだけど・・・・――
――後の事を考えれるような質では無いわね。本物とは正反対よ。――





「・・・・!何処ニイる、」

「所詮は残党のくずの中のくずだな。」



真後ろ、さっきまでいなかったはずなのにいつの間にか真後ろに移動していた。
薄く笑うと構えた剣を振り下ろした。
いつも愛用している槍ではない。
今まで見たことも無かった剣技でそれに襲いかかった。





「くずはくずらしくさっさと死ね。炎帝罰真!!」




ゴゥゥゥゥウウ・・・。



これまでの彼の戦闘法とは全く違う。
全てを消すような、完全な無にするような・・・綺麗過ぎる技。
舞い上がった炎はさっきフェイルが出した炎より凄まじかった。
全てを焼き尽くす。そんな表現が一番いいだろう。





耳障りな断末魔が聞こえる。


鬱陶しい。




「リュ、リュオイル!そんなに燃やしたら民家に届くとちゃうんか!!?」


「気付け馬鹿が。
 何者かによってこの周辺は完全に結界が張られている。」



馬鹿。と言われてカチンッ!ときたが今のアレストには何も言えないだろう。
リュオイルの目がそう言っている。「何か文句あんのかよ。」と・・・・。
リュオイルはフェイルの所に来ると何事も無かったように手当てをはじめた。
この部分だけを見ればいつもと変わらないのだが・・・・
やはり視線が冷たい。
言葉よりも視線が怖いのだ、




「・・・・リュオ・・・君?」

「どうした、痛むか。」

「え、いや、そういう訳じゃないんだけど。」

「なら何だ。」



ぴしゃり、と言い放つ冷たい声は別に傷つけようとかそんな事は思っていないのだろうが、
いつものリュオイルと違うのでどうしても戸惑ってしまう。
親切なのは変わっていないのだが、一つ一つの動作が全く違う。



「・・・大丈夫?」

「意味が分からない。」

「ご、ごめんなさい。」




アレストは唖然とその光景を見ている。
口をあんぐりと大きく開けてみっともない。



(・・・・・無茶苦茶変わってんやけど、フェイル至上主義は変わってへんわ。)



嬉しいやら悲しいやら。
そんな事を考えていたら何処からとも無く頭痛がしてきた。
こんなリュオイルが毎回毎回出てきたら恐らくアレストは胃の病気になるだろう。
・・・・それは勘弁してほしい。



「おい、そろそろ行くぞ。・・・立てるか?」

「え、あ、うん。大丈夫。ありがとう。」

「・・・・何や、この差は。」



妙に虚しいアレストであった。






「ねぇ、リュオ君。さっき誰かによって結界が張られてるって言ったよね。
 どうしてさっきのリュオ君は気づかなかったの?」



ビート邸の地下水路室の扉まで来て思い出したかのようにフェイルはリュオイルに聞く。
さっきまでビクビクしていたがあっという間に慣れてしまった。
今では笑顔を見せるほどで、そのたくましさに後ろから付いてきていたアレストは眩しそうに見ている。



「さっきの?・・・あぁ、もう一人のこれか。」

「もう一人ぃ?一体リュオイルの中には何人おるんや。」

「(無視)あいつは俺と違って能力も低いからな。
 最も、あいつに出来る事は俺には出来ない。あの甘ちゃんの性格はどうあっても無理だ。」

「(無視しなくても・・・)・・・そうなんだ。リュオ君は覚えてるの?」

「敵の存在すら察知出来ない奴が分かるわけあるまい。」



フェイルは隅でいじけているアレストを慰めるべく傍を離れた。
特に気にした様子もないリュオイル(黒)は扉をじっと睨んでいる。



「ア、アレスト大丈夫だよ。きっとすぐ戻ると思うから・・・・多分。」

「せやかて、あんた以外アウト・オブ・ザ眼中な黒リュオイルとこれからも
 一緒に旅せなあかんと思うと・・・・・・」

「ファ、ファイト。」




これから大変だねぇ。

うちだけがな。




イジイジとしているアレストを何とか説得(もとい慰める)したフェイルは、今だ扉を睨んでいる
リュオイルの傍にやってきた。



「そろそろ行くぞ。何か嫌な気配が外にいる。」

「嫌な気配?」

「魔族らみたいな感じか?」

「おそらくはな。だが今までの三人と違うな。」

「(無視されなかったことに感激)てことは新手やな。」

「推測でだがな。いくぞ。」



緊張した面持ちで扉を勢いよく開ける。
その瞬間、妙に湿っぽい風が吹いた。
不思議に思ったアレストが、身を乗り出して中を見る。




だが、そこには





「な、何や・・・これ。」






そこにはあまりにも残酷な光景が広がっていた。