光って、どんな色なのかな。







空の色が夕焼け色に変わる瞬間はどんなに感動するかな。












きっと私はもう見ることが出来ない。


悲しいのはその記憶がどんどんと薄れてしまうこと。


泣きたくなるのは大好きな兄の顔を忘れてしまうこと。











本当に私の目の前にいる貴方は私の「兄」なんですか?























■天と地の狭間の英雄■
       【開かれた心】〜大切な者への愛情〜













フェイルの永い眠りから覚めて2日がたった。
だがまだ本調子でないフェイルをすぐ旅に連れて行く事など出来るわけがないので
三人はこの村の宿屋を数泊分とっていた。


リーズはというと、その後何度も交渉をしたがシリウスの固い意思によって
渋々とカイリアを後にした。




(アレスト、リュオイル。後は頼んだわ。)

(ええ!!うちらにあの頑固馬鹿を説得すんのは無理やで!?)

(・・・・いい結果を期待してるわ。)

(何なんだ、その微妙な間は・・・・)

(・・・・それよりも連絡が入ったの。(無視)
 彼女の回復次第でいいから城に戻ってきて頂戴?)


それだけを言い残すと、リーズは兵を連れて引き上げた。
リビルソルトからの内容も気になるが、あの頑固を説得する方がかなり時間が掛かりそうだ。








回想終了・・・・







「何でうちらがあの頑固馬鹿のシリウスを説得せなあかんのや?」

「僕に聞くな。・・・それよりもフェイルはまだなのか?」

「うーん。お兄ちゃんには私も言ってるんだけど・・・
 あ、リュオイルさん。フェイルちゃんはもうちょっとだよ。
 それよりもお茶のお変わり如何ですか?」




器用に二人の受け答えをしているミラは特に気に障った様子もなく、空になったリュオイルのカップに
紅茶を注ぎはじめた。
それに「あ、どうも。」と律儀に返す。

逆にアレストは頭を抱えてあーだのうーだのと悩んでいた。
恐らく今現在でのシリウスの心境はこうだ。




アレスト→  何となく話しの分かる変な方言のうるさい女
リュオイル→ 恥知らず。不法侵入者。馬鹿みたいに真面目野郎。
フェイル→  人懐っこい変な子供。




どっちにしてもリュオイルは完全に警戒されている。
フェイルはその天性ともいうべく人懐っこさで、一日しか経っていないのにシリウスの警戒心を殆ど解いた。
アレストは・・・・一応警戒はされていない。多分。

それでもあの頑固者を説得するにはまずミラがいなくては無理だ。
カイリアに来てから、シリウスがシスコンという事が発覚した。
それだけでもびっくりするような事なのだが、如何せん、三人にある時間はそう長くない。
早く説得させて薬草を分けて貰いたいのだが・・・・・



「二人ともあんまりお兄ちゃんの事悪く思わないでね。
 私が目が見えなくなってからあんな風になっちゃったの。
 今は無愛想かもしれないけど・・・昔はよく笑ってたんだよ?」



そう、目の見えなくなる前まではお兄ちゃんは笑っていた。
勿論、今も笑ってくれていると思うのだが・・・・でもそれを証明することが出来ない。
私は村の風景も、お兄ちゃんの顔さえもはっきりとは覚えていない。






全てが、全ての記憶が、景色が・・・・曖昧になっている。





「ミラちゃんごめんな、そういうつもりやなかったんや。」

「ううん。でもそれは事実です。
 辛いとは思うけど、でもお兄ちゃん傍にいてくれてるし・・・」




でもね、時々・・・ううん、最近になってから気になった事があるの。

お兄ちゃんも年頃でしょ?

私なんかの面倒見てるのもそろそろ疲れたんじゃないかな。

お兄ちゃんは優しいけど、こんな妹を持って不幸だなって思ってない?



ごめんなさい。お兄ちゃんを疑いたくないけど

でも、すごく不安なんだよ。

私がお兄ちゃんの人生を縛り付けているみたいで、

悲しいんだよ。






「・・・リュオイルさん。」




暫く黙り込んでいたミラが唐突に顔を上げた。
心配そうな顔をしていた二人はいささか驚いたものの、思考を回復させるには時間は掛からなかった。



「なんだい?」

「空の色は・・・青ですよね。ずっとずっと、果てしなく続いている青ですよね。」

「そうだよ。季節によって色合いが変わるけど・・・綺麗な青だよ。」

「夕焼けの色は赤い色ですよね。」

「うん、燃えるような、真っ赤な色だよ。」


どうしたんだろう、と二人して顔を合わせると、今度は少し寂しそうな顔をした。






「じゃあ、青空が夕焼けになるあの瞬間。・・・・あれは、どんな色でしたっけ。」






最後に見たのは、6年前の、確か11歳ごろの秋。
綺麗だったのは覚えてるんだけど・・・・あれは、どんな色?




「それは・・・・」



青から紅に変わる瞬間の色。
それは目の見えない少女には説明し難い。





「・・・どうしても思い出せないんです。
 お兄ちゃんの顔も6年前の頃しか・・・それに今はもう全然分からないんです。」




あの優しい笑みのお兄ちゃん。
じゃあ、今のお兄ちゃんはどんな顔?




「ミラちゃん・・・」




気まずい雰囲気が流れていたが、明るい声で遮られた。



「ありがとう!シリウス君。大分楽になったよ!!」

「っておい!早々に動くな。
 まだ安静にしていないと・・・」

「はーい。・・・・あれ?リュオ君どうしたの?アレストもミラちゃんも。」



何ともいえぬお気楽な声が辺りに響いた。
診察でよほど手を焼いたのかシリウスの表情も少し疲れ気味の表情。

だがそんな事は無視して、ミラは踵を返しフェイルの元まで歩み寄った。



「・・・ねぇ、フェイルちゃん。空の青色が夕焼けに変わる時ってどんな色かな?」

「夕焼けに変わる時?えっとねぇ・・・・・」



腕を組み、考え込むようにして暫くうなっている。
シリウスはミラの言葉に何かを感じたらしいが、あえて黙っていた。




「んーーーーーーーーー。・・・オレンジ、かな?あ、いや、それに赤を少し足した感じかな。
 あと、奥の方は白っぽいの。
 炎の中にあるオレンジに近いと思うな。
 雰囲気は優しいんだけど、でも切ないかもしれないし・・・
 それと何となく哀愁漂う感じだと思うんだ!!!」



元気良く答える姿は実に子供らしい。
ミラも、そんな様子が何となく分かったのか、薄く笑っている。
他の人が聞けば「何か分かったような分からないような・・・・・。」という感覚だが
ミラにとってその質問の答えは・・・十分だった。



「そっか・・・・ありがとう。何となくだけど、分かった気がする。」

「そういえばミラちゃんの目って治らない事はないんだよね?
 じゃあ私頑張って治療法探すよ!!!」



この言葉にシリウスも、そしてミラも驚いた。
「何を言ってるんだ?」とでも言いたそうな顔で。




「・・・ミラの病気は・・・恐らく決して治らない。
 下らん同情で、守れもしない事を口にするな。」



低い、少しドスの効いた声が聞こえた。
アレストは身震いをしてシリウスの方を向く。
リュオイルも不審そうな目で睨んでいる。
だがフェイルは怯まない。
どんなにきつく睨まれても動じる事もなくただ笑っている。




「恐らくって事はさ、可能性が無いわけじゃないんだよ?」


「それでも・・・」


「シリウス君は、結果を知るのが怖いんじゃないのかな。
 確かに誰だって0に近い可能性だったら落胆すると思う。諦めると思う。
 でもね、世界って狭いようで案外広いものなんだよ?」


「何が言いたい?」


「結果を知る事、真実を知る事は怖い。私もそう思うよ。
 でもね、だからといって諦めるということではないと思う。
 信じて信じて、絶対に大丈夫だって思ってればきっと道は開けれる。
 どんな結果が待っていたとしても、今自分に出来る事を精一杯しなきゃ何の意味にもならない。
 それらを乗り越えないと、・・・叶えられることがあっても絶対叶わない。」



「・・・・・・」



「それとも、ミラちゃんが一生このままでも良いって思うの?」
「違う!!俺は・・・ミラに、世界の色や景色を知って欲しいと思っているだけだ!!!」





烈火の様な怒号が響いた。
いつも一緒にいるミラでさえも驚いて後ずさりしている。

怒鳴られた対象となっているフェイルはまた動じず、にこにこと答えた。





「ね?だから諦めないで・・・・。
 頑張ろうよ。」





自分に向けられていた怒号の声であったのに、フェイルは何事もなかったようにまた笑った。
その表情に拍子抜けしたのか、シリウスも複雑な顔をしている。



「・・・・・・」



そのまま何か言いたそうだったが、屈託無く笑うフェイルの表情に毒気を抜かれたのか
何も言わずに二階へ上がってしまった。





「・・・・フェイル、よくもまぁあの頑固者にあんだけ言えたなぁ。」


はぁ、と嘆息をすると感心しながらフェイルの傍にやってきた。
同時にリュオイルも。




「フェイル、怖くなかったか?」

「え?全然。シリウス君は優しい人だよ?
 普段はあんな感じなんだと思うんだけど、でも優しいよ?」









『優しい人だよ?』









初めて聞いたのかもしれない。
無愛想なお兄ちゃんになってから、初めてあんな言葉を聞いたかもしれない。




「あのシリウスが優しい!?フェイル、頭大丈夫か?」

「あー!馬鹿にしてる!!シリウス君優しいもんっ!
 さっき診察してもらったけど・・・本当に嫌いならもう出てってもらうでしょ?普通は。」



馬鹿にされた事が頭に来たらしく、フェイルは頬を膨らませてそっぽを向いた。
不謹慎ながらも、この光景が懐かしいと思える。
彼女と会話するのがこの上なく楽しい。




「そやな、あのシリウスやで、嫌いな奴にはとことん蹴りいれるやろうな。
 それにここ二日続いて、しかもシリウスの方から「診察をする」なんて言ったし・・・」

「でしょ?シリウス君はきっと不器用だから上手く言葉に出来ないんだよ。
 だからついきつい言葉が出ちゃうんじゃないかな?」



「絶対そうだよ!」と胸を張って言い切るフェイルに、アレストは苦笑した。
リュオイルはどこか不機嫌そうな表情だったが。




「・・・・・」





その様子を静かに見守るミラは、表情は無いものの実に感動していた。






お兄ちゃんを分かってくれる人がいた。





お兄ちゃんが、私に色んな世界や色を見せたい、という気持ちも嬉しかったのだが、
大好きな兄の事を理解してくれた事に感激したのだ。





「あ、ごめんねミラちゃん。勝手にこんな事言って・・・」

「ううん、ありがとう。お兄ちゃんの事分かってくれて。
 本当にありがとう、フェイルちゃん。」

「ううん、あ!さっき言った事本当だからね?
 絶対、とは言え無いけどミラちゃんの病気が治るような情報、手に入れて見せるから。」









一緒にたくさんの景色を見ようね。









きっと村の皆が同じ言葉を言えば私はそれをただの同情としか受け止めるしかない。

どんなに仲の良い人でも、それはただの慰めととしか言えないだろう。

「可哀想」この一言で片付けられてしまう。


けど彼女はは何かが違う。
言っている事は一緒のはずなのに、それでも何かが違うのだ。
それは彼女の中だけにある純粋さかもしれないし、もしかしたら生まれ持った天性なのかもしれない。




「・・・・うん、うん。」




分かってくれて、嬉しかった。






「ミラちゃん?」






出会えて、本当に良かった。




「どうしたの?」



心配そうなフェイルの声が聞こえる。
どうしてなのかなって思ったけど、頬に伝わる冷たい雫が零れ落ちたのを理解した時に
あぁ、泣いてるんだ。って初めて分かった。



「ううん、ありがとう、ありがとうフェイルちゃん。皆さん。」



ただただ涙を流すだけの少女に戸惑いながら三人は顔を合わせた。
何か不味い事でもしてしまったのだろうか。




「一緒に、色んな景色、見ようね。」


「・・・うん!!」



察しが付いたようで、嬉しそうに笑うフェイル。
アレストとリュオイルも、どこかホッとした様子で見守っていた。




「あ、でも、シリウス君には悪い事言っちゃったかも。
 あんまり、干渉されたくないようだし・・・・」

「いいの。お兄ちゃんもフェイルちゃんの言った事ちゃんと分かっていると思うの。
 でも、ほら、お兄ちゃんって不器用だからね。」

「確かにあれは筋金入りの頑固で不器用だでな。
 まぁ大丈夫やと思うで?
 多分シリウスは頭冷やしに行ったんやろしな。」



腰に手を当てて、よっこいしょ。と言いながらソファから立った。
急に立ち上がったアレストに不思議さを感じつつもリュオイルは何も言わない。
伸びをして軽く準備体操をするアレストに少し驚いたフェイルは、不思議な顔をした。




「どうしたの、アレスト。」

「ん〜?・・・あぁ、ちょっと渇入れて来かと思ってな。」

「「渇?」」



息ぴったりで同じ事を言うフェイルとミラは傍から見ればまさしく姉妹。
そんな様子に苦笑しながらもアレストは階段を上り始めた。


「あ、ミラちゃん。シリウスの部屋はどこやっけ?」

「え、あ、上がってすぐ右側の部屋です。」

「あんがとさん。ほんじゃ、ちょっくら行って来るで〜!」


手をヒラヒラさせながらアレストはその部屋に近づいた。
フェイルとリュオイルは平然としているが、ミラは不安そうに見つめていた。

















コンコン。


木製の扉がいい音を立てて鳴り響く。
だがノックをしても、この部屋の主は返事をしない。


(まぁ、分かりきった事といやぁ、分かりきってるんやけどなぁ。)


半分呆れた溜息をして、アレストは再度ノックをした。



コンコンコンコン。


「あー・・・シリウス?おるんやったら返事はしてくれへんか?」


虚しいから。




渇を入れに来たものの、何と言えばいいか上手く分からないアレストは苦そうな顔をしながら
シリウスの返事を待つ。




「・・・何か用か?」



聞こえるか聞こえないか分からないほどの小さな声が聞こえた。
相当落ち込んでいるのだろうか、それとも・・・・・




「・・・お節介かもしれへんけど、あんま落ち込むなや。
 あんたがミラちゃんをめっちゃ大事に思ってたんはよぅ分かった。
 あんたがやりたい事も何となく分かったし、うちらも首は突っ込まんようする。」


「・・・・・」


「けどな、フェイルの言っている事も正当や。 
 動かなかったら意味ないし、可能性少ないからて諦めたらあかん。」



そこまで言い終えるとギィィ、と扉の開く音がした。
まさか扉を開いてくれるとは思わなかったアレストは、びっくりしてシリウスの顔を凝視した。




「分かっている。あいつの言っている事は正しい。」

「シリウス・・・」




開いた扉の前にいるのは疲れたような顔をしたシリウスだった。
やはりどこか沈んでいる。




「正しいからこそ、認めたくても、認められない。
 あいつの言っている事が正しすぎて。」

「フェイルの言った事、理解してくれたんやろ?
 ならいいんや。うちは何にも言う事無い。」

「・・・?」

「あんたがまだ頑固に自分だけの意志で突っ走ろうとしてたんなら、蹴りか何かで渇入れようと
 思たけど、・・・あんたは大丈夫やと思たんや。」

「どうしてそう言える?
 お前の思い違いかもしれないんだぞ。」



不思議そうなシリウスの瞳がアレストを捉える。
そんな様子にアレストは面白そうに笑うばかり。



「そんなん、顔見とったら分かる。
 うちを誰やと思ってはるん?うちはアンディオン出身のスパイやで?
 顔の表情見ただけで相手の感情読み取るなんて簡単なことや。」




スパイという言葉に敏感に反応したシリウスに、アレストは慌てて付け足す。
そういえばこの男は人一倍警戒心が強いのだ。
いまここで刺激すれば今まで苦労した説得が水の泡になってしまう。




「あぁっと、スパイっちゅうても、今は休業中やで?
 今は訳ありでフェイル達と旅してるんやさかいな。」



不審そうな目で睨まれ、冷や汗タジタジになりながら弁解をする。
正直言ってまだフェイルみたいに接する事が出来ない。





「・・・まぁいい。
 それで、それだけの事を俺にわざわざ言いに来たのか。」


「は?え、あ、まぁそういう事になるんやろうな。」




曖昧な返事で何となく不満そうなシリウスを横目にアレストはどうしようかと悩んでいた。


(あーもー!!
 何でこういう無口にはうち話のネタが出てこうへんねんな!!!!)









「・・・・・悪かった。」






「は?」





急に謝りだしたシリウスに、自分も分かるほどの間抜けな声を出して後から恥ずかしくなった。



「だから、あいつに言ってくれ。
 怒鳴って、悪かったって。」




あいつ=フェイル。
つまり・・・・・・・・



「なにあんた。熱でもあるんとちゃうん?」

「お前な・・・・・。」




ギロリと睨まれるとまさに蛇に睨まれた蛙。
「あはは、冗談や。」と言いながらもかなり引いている。
この目つきさえ直せば、無口でも人は寄って来ると思うのだが・・・・・。
それでも何とか素の表情に戻り断る。



「悪いけど、自分が悪いと思ってるんやったら自分で謝ってきない。
 別にうちが言っても構へんけど、それやと意味ないで?」



腕を組みながら自分より遥かに背の高いシリウスを見上げる。
さっきまでのビクビクした様子など欠片も無く自信たっぷりに、そして意地悪そうな笑みで。


「・・・・・」

「フェイルはまだ下におる。 
 心配せんでも大丈夫や。あのこは優しい子やで怒ってへん。」


ていうかあんたに怒られたこと事態理解してへんのやからな〜。


まるで喧嘩をした兄弟の仲介でもしている様な感じでシリウスの肩に手を置く。
それと同時にシリウスはゆっくりとだがリビングへと足を運んだ。














「悪かった。」







この一声で当たりはシン・・・と静まった。
ミラは嬉しそうに、リュオイルはどこか不機嫌そうに、そして謝られた対象となるフェイルは
「はい?」と気の抜けるような声を出した。



「だからその、悪かった。お前は正当な事を言っていて・・・。
 ・・・・兎に角、怒鳴って悪かった。」



照れ隠しでなのか、フェイルの前に立って言っているものの目線が合わせられずずっと目が泳いでいる。
今までのシリウスの行動とのギャップが激しすぎてついつい笑ってしまった。



「変なの。本当はね、私が謝らないといけないと思うんだけど。」



掌を口元に近づけながらフェイルはクスクスと笑っている。
シリウスは何とも言えない顔でフェイルを見下ろす。



「私シリウス君の事全然怒って無いから。
 それよりも、無神経な事言ってごめんなさい。」



頭を深く下げられてシリウスは困った。
どう対応したらいいのか分からず、ただ呆然と見ているだけだ。
こういう素直な人間は、一番扱いが分からない。
ズバズバと無神経な事を言うんじゃなくて、相手を見ながら考えて発言する。
こちらの様子を伺うようにして、不安そうな顔をしてそんな事を言われてもどうすればいいか分からない。



「でも、あの言葉を訂正するつもりは無いし、私はミラちゃんと約束したから。」





一緒にたくさんの色を見ると






たとえ架空の約束事だとしても


たとえ達成できない約束だとしても


どんなに辛くても


どんなに困難でも





忘れられない、大切な約束をした。





「私もリュオ君もアレストも、まだ旅の途中だからそればかりに集中できないけど
 でも、私が出来る事を精一杯したいと思ってるんだ。」





強い意志を宿した瞳


何に変えても譲らない瞳





「・・・・・」



二人がこいつに付いて行く理由が、何となく分かった気がする。







「・・・俺は・・・」






何か、何か大切な事を言いかけようとした時、
外から大勢の悲鳴と、想像も出来ないくらいの大きな爆発音が聞こえた。